今日、進学する大学院を決める(決めねばならない)
そうこうしているうちに、期日になってしまった。帰省してからの2週間、何をしていたかと言うと、大学について考えていたわけではなく、公務員試験の勉強をしていたのだ。そうして大学の選択から目を背けているうちに3月1日が来てしまい、選択をしなくてはならなくなった。どちらの選択肢を捨てるにしても、その理由をかためておかないと後悔するらしいので、書く。
私が向こうの大学を選ばないのには理由がある。第一に、受験する研究科を間違えたために、自分の今の専門をメインに学ぶことができない。もちろん、これから研究者としての道を目指すならば、視野を広く持った方がいいと思うし、私も言語学のいろいろな分野に興味があるので、このことはたいした問題ではない。が、私が目指すのは公務員だ。
研究職に興味がないと言えばウソになるが、ゼミの先生は計70人あまりのゼミ生を抱えていたり、それでいて研究者であり、かつ「大学入試の採点で春は大学に泊まり込みしている」「ゼミの小テストを半分寝ながらマルつけしてしまった」などとおっしゃる。また、学振の特別研究員制度の説明に来ていた若手の研究者の方は、「研究職といっても研究だけに没頭できるわけではなく、こまごまとしたやるべきことがたくさんある」とおっしゃっていた。さらに、よくお話をうかがう博士課程の方も、忙しい時期にはあまり睡眠時間を確保できていないようであった。なにより、ゼミの先生に「研究職は実力に加え運に恵まれないと一生定職に就けない可能性がある」というお話をいただいており、実際インターネットでは生活保護を受けながら研究を続ける講師の方を見ている。つまり、そういうお話を聞いて、研究者の方々の実情を想像して、私には難しいのではと思ったのだ。
「病院なんて行ったのはいつが最後だろう」などとは一生言えないであろう人間だし、社会人になってからも、社会人になりたての頃は特に、親に頼らず生活して行けるビジョンが見えない。親も永遠に働き続け、永遠に私にお金を費やしてくれるわけではない。というか、もう少ししたら親も定年なので、いつ就けるかわからない定職に私が就けるまで、さらに就いてからしばらくするまで支援してもらうというのは、無理な話だろう。ゆえに、私は将来的に、研究職ではなく、もうひとつの夢、公務員の方を目指す道を選びたいと考えている。
これから2年で学びの道を終えるならば、視野を広げるために別の分野を学ぶよりも、今の自分の専門を深めたいと私は思う。そもそも、今の専門の勉強が楽しかったという理由で大学院に進学したいと考えるようになったのだ。出願先を間違えたのは私の落ち度ではあるが、もし出願先が正しい場所だったとしても、そこは先生が生徒にあまり関与せず、研究職を目指すもの同士で切磋琢磨する環境とのことだったので、そこで公務員試験の勉強をするというのは、自分の性格的にかなり厳しいだろうと思う。私はアウェー感というものに強いストレスを感じる人間だ。大学院の入試を受けに向こうの大学に行った時も、駐輪場にいるときから不安でたまらなかった。
となると、公務員試験の勉強をしつつ、大学院での勉強をしたい、というお話になる。公務員試験の勉強は一度、前回就活をしたときに体験したことだが、かなりの時間を要する。試験の半年前から勉強を始める人も多いと聞き、余裕ぶっていたが、まじめにそれをやろうとすると私生活というものが皆無になることだろう。そのくらい忙しい。なので、私は時間のあるときから、早め早めに対策をしようと決めた。それで、春休みの今も休まずに勉強しているというわけである。大学院に進んでからもこれを続けられるか、それが大きなポイントである。
ここで私が向こうの大学を選ばない第2の理由が出てくる。向こうの大学は、私の大学と違う、という点だ。勉強をするからには、もちろん快適な環境で勉強したいと思う。しかし、私は向こうの大学に行けば100%の「1年生」と化す。つまり、大学の右も左もわからない状態に逆戻りするということだ。私は今の大学に入ってから、自分の学部のキャンパスの食堂を使い始めるまでに1年以上を要したし、図書館やその他の建物の自習スペースを利用するまでにはそれ以上かかった記憶がある。つまり、環境に慣れるまでに非常に長い時間を要するのだ。そのことを考慮すると、これから別の大学に進学して、システムや設備も一新されるとなると、自分が100%の力を発揮して大学の勉強と試験勉強の両立を行っていけるようになるまでには、もうすでに試験の時期が訪れてしまっていそうだなと想像される。他方、自分の大学ならば勝手は知り尽くしている。キャンパスは自分の庭同然である。その差は一目瞭然だ。
さらに、これは細々した理由になるが、向こうの大学では文学の授業が必修だったりする。私は文学部なのに文学がまったくわからず、嫌いで、成績もFすれすれという惨状であった。それを数単位とらなくてはならないのだ。私の大学でも昔はそうだったらしいが、今は言語学の授業だけで履修計画を組むことができる。それは私にとって大きなメリットである。
……などなど、上ではいろいろと向こうの大学を選ばない理由を挙げてきたが、一応私がなぜ今日の今日まで迷っていたかも書こうと思う。迷っていたからには、向こうの大学を選ぶ理由もあるのだ。
まず、学費が安い。私の大学は私大だが、向こうは公立だ。それは安いに決まっている。「安い」の程度がどのくらいかはさておき、とにかく自分の大学と比較した時、向こうの大学のほうが明らかに安いのである。
次に、図書館の充実度が比べ物にならないくらい、いい。たしかに私でも向こうの大学の本を借りることができるはできるが、実際に本棚の前に足を運んで、関連書籍も含めてじっくり見るということはできない。加えて、私の大学は来年度から図書館が改装工事に入ってしまうのだ。これは大きな打撃である。実際大学の図書館から借りている本よりも学部の図書館から借りている本の方が多かったりするのだが、それでもこれは重大なことであるように思う。
それよりもなによりも、大学のレベルが高い。つまり、私が向こうの大学を選ぶとすると、学歴ロンダリングというやつになるのだ。しかも、とんでもないレベルのランクアップを果たすのだ。大学院は、(先生によく見ていただいた卒論があれば)名前を書くだけで誰でも受かるのかもしれない、と実感してしまった。外国語の試験など、手ごたえを感じなかったのに、受かったのだ。世界の真実を知った気分である。それはさておき、向こうの大学を選ぶと、「学部は日東駒専卒だが、最終学歴が東大の修士課程」みたいになるのだ(ちなみにこれはただの例だ)。なので、当たり前と言えば当たり前だが、家族は向こうの大学に進学するのがいいと思っているようである。ここが一番大きなポイントなのだ。
将来は公務員になりたい、というのは昔から抱いてきた夢ではあるものの、前回の就活の時にそれほど熱がはいらず、そのために、これは「昔から抱き続けてきた夢」である、というだけの理由でボンヤリ思い描いていただけの職なのかなと、ほんのすこし感じてしまった。どんな職を見ても、公共性の高い仕事以外にはあまり惹かれなかったため、たしかに公務員"ぽい"仕事が私のやりたいことにマッチしているのかもしれないと思うものの、そのような仕事は公務員以外にも多く存在する。加えて、今は転職が当たり前の時代だと聞く。公務員は学歴不問らしいが(それが本当かどうかはさておき)、今後その仕事に違和感を感じて、転職するとなった時、学歴が多少なりとも働く場面があるのではなかろうか。私の家族は採用試験を伴う転職を経験したことがないと思われるが、そういう考えもあるようだし、実際私もそのようなことを思ったりする。しかし、こればかりは自分の未来の世界の話なので、誰にもわからない、気がする。
いろいろと悩みは尽きないが、転職後のことを考えようにも、公務員試験に受からないのでは先も何もあったものではない。そう思って、大学の勉強を楽しみながら試験勉強を行う、ということができそうな自分の大学を選びたいと思っている。帰省してきてから、大学の研究に役立つスキルの習得より試験勉強を優先してやっていたのは、公務員になりたいという思いが多少なりともあるからだと思う。ひとつ、決めて取り組まなければ、ふらふらしていては、やれることもやれなくなってしまうので、早いところ決めたほうがいい。私の心は公務員試験に傾いているようなので、研究と試験勉強とがどっちつかずにならず、どちらも両立して取り組めるという確信を強く持てる方を選択したい。
将来の自分はこの選択を後悔するかもしれないが、逆の選択をしたとしても何かしら後悔することがあったのではないだろうか。人生は選んだ方向にしか進まないと思うので、その真偽を確かめることは不可能だが、自分の性格的にそうなのではないだろうかと想像している。とにかく、迷いは残るものの、今日じゅうに返事をしなくてはならないため、今日、選択する。私は「自分の大学に進学する」という選択をとるつもりだ。
この経験から得たことは、「重要な選択をする際にはいい加減に行わないこと、さもないと後で後悔するし悩む(出願間違いの話)」「ためらわずに、自分のために、思い切って行動すること(情報収集の話)」「恥をかくことを怖がって逃げないこと(先生に出願間違いを相談した話)」「格好つけずに、正直に話すこと」等々。たぶん将来忘れて、失敗した時にまた思い出して、後悔すると思われるので、思い出したらこの記事を読みに来るといいと思う。
コメント
コメントを投稿